https://www.mamez.site/entry/2018/11/08/192104

生きることの難しさと死ぬことの難しさ

私宛の遺書に綴られてた彼の言葉の一部

 

色々と考えた上で、生きることをやめることにした

 

死ぬことにした。ではなく、

生きることをやめる。という表現をした彼。

 

完璧主義な彼には珍しく誤字脱字があったりして、手が震えるから字が書けないと、封筒の宛名以外はパソコンで作成されてた。

 

封筒に書かれた私の名前だけが彼の文字。

 

生きることをやめる決断をするのって、それほどまでに追い詰められるって、どれほど苦しかったんだろうって思う。

鬱はそうゆう病気だって言われても、日本はうつ病大国で自殺大国だと言われても、鬱病になった人全員が死んでるわけじゃない。

そもそも、私は彼から自分は鬱病だと聞かされてたわけじゃない。

正確には、昔、鬱病だったけど自力で治したんだって聞いたことはあった。自力で治るんだーなんて思ってた。私、馬鹿すぎ無知すぎ。

 

彼の気持ちが知りたかった。少しでも彼の気持ちに近づきたかった。

 

自殺未遂をした人の体験談なんかも読んだけど、みんな今生きてるからその体験談も書けるわけで。

 

その時の私は、本当に言葉でどう表現したらいいかわからないくらい、これから先生きてて、これ以上の苦しみを味わうことなんてないんじゃないかってくらい、地獄の底だった。

 

食べることも寝ることも出来ず、意識朦朧の中、苦しみだけが続く毎日。

 

死にたいと思った。消えたいと思った。

実際、何度か試した。

でも、私は死ねなかった。

怖かった。すごく怖かった。

 

首吊りって難しいんだよ。ロープを輪っかにしてドアノブに引っ掛けて更に上に通して首にかける。台から足を離しても、首が上を向いてしまって落ちちゃう。首がすごく痛くて反射的に上を向いてしまう。

 

カミソリで腕の脈を切るアレ。あれは、全然死ねないよ。意識ぶっ飛んでるから痛みは感じなかったけど、そんなに切れない。あとで調べたら、腕を切り落とすくらいの勢いじゃないと死ねないらしい。

 

包丁を喉元に持っていってひと突き、絶対無理。怖すぎた。

 

眠剤オーバードーズは普通に目が覚めた。

 

どれもこれも、ドラマみたいにはできん

 

夜中、大通りで車道に飛び出してしゃがみこんだ時は、自転車に乗った通りすがりの人に両脇抱えられ引きずられながら歩道の方へ連れて行かれたりもした。今思えば、あの人、すばらしい方だな。ていうか、そもそもそんな死に方、車運転してる人に多大なる迷惑行為どころじゃない。最低、何してたんだろ。

 

彼は、誰にも迷惑をかけずに一番後処理にお金もかからない方法でいなくなった。綺麗に髭まで剃ってさ、高級ブランドのスーツまで新調してさ、それに身を包んで。ナルシストかよ。なんなんだよ。

 

彼と同じ場所同じ方法も考えたけど、正直そんな気力も労力もなかった。めんどくさすぎる。そのくらい、用意周到で相当念入りだった。

 

自殺って後処理に遺族が莫大なお金を請求されることが大半らしい。

 

どこまで完璧主義なのか。完全犯罪すぎて驚く。

 

私、本当に死にたいって思ってた。でも、さぁ死ぬぞって、めちゃくちゃ怖いよ。まずその恐怖に打ち勝てない。打ち勝つ必要なんてないんだけど。こんなに苦しいのになんで私は死ねないんだろうとそんな自分を責めたりして。

死を前にした恐怖も凌駕するくらい、生きることをやめたかった?それともその恐怖さえ感じれないくらい生きてるのが辛かった?恐怖で手が震えてたから字が書けなかったのかな。

 

私はただ、彼の気持ちに近づきたかっただけ。どれほどの苦しみを味わえば彼と同じ境地に行けるんだろうって思ってた。彼が苦しんでたのと同じ分くらい自分も苦しみたかった。まだまだダメだ。彼はもっともっと苦しんだんだ。どれだけ苦しかったの、あなたを失ったこの苦しみ以上の苦しみだって言うの?だって、今、私は生きることができてる。生きるのをやめようとしても、やめる勇気さえない。

 

生きることをやめることにした

 

彼は死を選択したんじゃない

生きることをやめる選択をしただけ

でもね、でもね、

どちらも選択しない

って方法もあったかもしれないよ。